星仲間より無料のかぶり取りソフト『GraXpert』が結構使えると聞き、早速検証してみました。
 
Windows版の他、MacOS、Linux版もあります。Mac版があるのはありがたいです。
早速Mac版をインストールしてみました。

スクリーンショット 2022-09-09 21.40.03

起動したところ。
画面左側にボタンがありますが、上から順番にボタンを押していくだけです。

1)Crop on/off (CROP)
2)LOAD IMAGE (画像を開く)
3)Stretch Options(画像強調)4段階調整できます。出力結果には反映されません。
4)Create Grid (自動サンプルグリッド打点) その上のバーは、一列に何個グリッドを打つのか、下の
     バーはどのくらいの許容量でグリッドを打つのかを調整します。
5) Interpolation method (補完方法) 3種類あり。今回は一番下のKringingが良かったです。
6)Create Background(処理実行)
7)   Saving 保存 

処理結果は上の中央にあるタブで、Original、Processed、BackGroundに切り替えることが出来ます。

スクリーンショット 2022-09-09 21.58.13

随分前のラブジョイ彗星の写真です。フラット処理していないのか、かなり周辺減光が目立ちます。
Stretch Optionsで少々強調を掛けています。
スクリーンショット 2022-09-10 7.17.08
最周辺部を少しクロップしました。

スクリーンショット 2022-09-09 21.58.29
グリッドは目一杯の25、トレランスは最初10で行いましたが、中央部の明るい部分を選択してくれなかったので4.0まで上げて、彗星の尾等がグリッドに掛からないよう移動しました。
GraXpertスライド.019
Interpolation methodを変えて処理した結果です。Krigingは他より倍位時間が掛かりました(約2分)が、最も良かったです。
スクリーンショット 2022-09-09 21.58.47
処理後のBackGroundです。よさげですね。

スクリーンショット 2022-09-09 21.58.58
Processedの画像です。かなり高精度に補正されています。


ラブジョイ200㎜F3 のコピー
補正前

ラブジョイ200㎜F3.2RGB_GraXpert2 のコピー

補正後


これはかなり使えますね。これで無償なのはありがたいです。
参考までにPixInsightのDBEによるカブリ補正と比較してみました。

スクリーンショット 2022-09-09 22.45.44

PixInsightのDBE画面。

_200_F3_2__DBE1 のコピー

PixInsightのDBE処理後。

GraXpert出処理した画像と比較してみました。
GraXpertスライド.018
PixInsightと遜色ありません。いいですね。


9/10追加
他の画像でも検証してみました。
123の2 4000
ε-130D+冷却6DMark2で撮影したクラゲ星雲付近です。
スクリーンショット 2022-09-09 11.48.02
強調掛けると輝度ムラ、色ムラが多いことが分かります。

Interpolation Methodを変えて処理してみました。
GraXpertスライド.018
このクラゲ星雲付近の画像は、上記の彗星で結果の良かったKrigingだとムラが多く出てしまいました。他の2つの方がまだ良かったです。Interpolation Methodを変えて試行錯誤するしかないのかもしれません。

ちなみにこの画像も各種補正方法と比較してみました。
GraXpertスライド.019
左上が原画です。右上がGraXpertのRBF。左下はPixInsightのDBE。そして右下はPsCCによるグラデーションマスク法による用手的なカブリ補正です。

GraXpertは補正が強すぎてクラゲ星雲付近が逆に落ち込んでしまい、逆にM35付近や左下端が明るくなってしまいました。補正の強さが変えられると良いのですが。

PixInsightのDBEの方が良い結果ですが、それでも完璧ではありません。
結局一番良かったのは、従来のPsCCのグラデーションマスク法だったのですが、補正に自分の意思が入るため、消してはいけないものまで消している可能性があります。
結局どれも一長一短ですが、簡単にオートで補正が出来、PixInsightのDBEに匹敵する無償ソフトのGraXpertは良いソフトだと思います。今後バージョンアップによってより使い勝手が良くなる(補正の強さが可変出来る等)といいですね。楽しみです。


2024年4月20日 追加
GraXpertがバージョンアップして2.2.2となり、MethodにAIが加わりました。
このバージョンからPixInsightのプラグインソフトとしても動くようになり、カブリ補正のために一旦PixInsightから離れることもなくなりました。

スクリーンショット 2024-04-20 19.38.12

スクリーンショット 2024-04-20 19.38.30

結果はこちら
スクリーンショット 2024-04-20 19.41.37
以前のバージョンより良くなっています。
比較してみました。
名称未設定2.001
左下が新しいAIを搭載したGraXpertでカブリ補正した画像です。

中心部の落ち込みが軽減されて、上側のカブリも前のバージョンより良く補正されています。
これだけでカブリ補正完了とはなりませんが、かなり良くなっていて仕上げのカブリ補正に掛かる時間も短縮できそうです。

GraXpertのソフト単体でも動きます。スクリーンショット 2024-04-20 19.49.37
こちらだとAIのほかに、RBFなどの他のMethodも使えます。
でもAIの結果は悪くないのでそのまま使うならPixInsightのプラグインで動かした方が楽です。

このバージョンから、カブリ補正はGraXpertを標準として、ABEやDBEを使わなくなりました。


2024.11.10追加
すっかり標準のカブリ取りソフトとして定着した感のあるGraXpertですが、今回紫金山アトラス彗星ではイマイチナ結果となりました。
先ずは元画像から。
スクリーンショット 2024-11-10 11.01.03 のコピー

CometAlignmentしてIntegrationしStarXTerminatorで星を消した画像です。かなりムラがあります。
これにGraXpertを実行すると....
スクリーンショット 2024-11-10 11.04 のコピー
周囲のカブリはかなり取れましたが、肝心の彗星の尾まで消えています。
両者をサブトラクションしてみると、
スクリーンショット 2024-11-10 11.08.23
やはり尾まで消されてしまっていますね。これでは使えません。
ABEを複数回実施してある程度のところで妥協し、Psで修正しました。
....マスクしてからGraXpert掛けたら彗星の尾は消されないんじゃないかと、彗星部分のマスクを作り実行してみましたが、結果は同じ。マスクが効いていないです。
結論、彗星のカブリ取りにはGraXpertは向きません。